市場に最も多く出回っている、安価で手軽なダイヤル式キーボックス。しかし、その手軽さこそが、最大の弱点であり、危ないと言われる所以です。ダイヤル式の多くは、4桁の暗証番号を設定するタイプですが、この仕組みにはセキュリティ上の致命的な盲点が存在します。それは、一度設定した暗証番号が固定であり、かつ組み合わせの総数がわずか1万通りしかないという事実です。侵入犯にとって、1万通りの組み合わせを試す「総当たり攻撃」は、決して非現実的な手口ではありません。特に人目につきにくい場所に設置されたキーボックスであれば、時間をかけて「0000」から順番に試していくことで、いつかは必ず開けられてしまいます。さらに深刻なのが、利用者が設定する暗証番号の単純さです。多くの人は、覚えやすいという理由から、部屋番号、誕生日、電話番号の下4桁、あるいは「1111」や「1234」といった、誰でも容易に推測できる番号を設定してしまいがちです。これは、もはや鍵のかかっていない箱に鍵を入れているのと同じくらい無防備な行為と言えるでしょう。また、一度解読されてしまえば、犯人は自由に鍵を取り出して合鍵を作り、キーボックスを元の状態に戻しておくことができます。そうなれば、家主は侵入されたことに気づくことすらできず、知らぬ間にいつでも侵入できる「フリーパス」を相手に与えてしまうことになるのです。便利なダイヤル式の裏に潜む、この単純明快な危ない仕組み。もしあなたがダイヤル式のキーボックスを使っているのなら、その暗証番号は本当に安全だと言い切れるでしょうか。その過信が、取り返しのつかない事態を招くかもしれません。