私は、築三十年のアパートで一人暮らしをしています。古い建物なので、各部屋のドアに鍵は付いていません。一人暮らしなので普段は気にならないのですが、友人が泊まりに来た時や、実家から両親が手伝いに来て数日滞在する時など、寝室にプライベートな空間を確保したいと、ずっと思っていました。かといって、賃貸なので勝手にドアに穴を開けるわけにもいかず、半ば諦めていました。そんな時、インターネットで「穴あけ不要 鍵」と検索して、その選択肢の多さに驚きました。特に私の目を引いたのが、既存のドアノブと交換するだけで鍵付きになるという製品です。これなら見た目も自然だし、退去時には元に戻せる。これだ、と思いました。早速、週末にメジャーを片手に自宅のドアノブのサイズを測り、適合する製品をネットで注文しました。数日後、届いた箱を開けると、思った以上にしっかりとした作りのドアノブが入っていました。説明書を読みながら、おそるおそるドライバーで古いドアノブを外し始めると、意外なほど簡単に分解できました。そして、新しい鍵付きのドアノブを、パズルのピースをはめるように取り付けていく。最後にネジを締め、実際に鍵を差し込んで回してみると、「カチャリ」という小気味良い音と共に、確かにドアはロックされました。たったこれだけのこと。でも、その小さな「カチャリ」という音は、私に大きな安心感と満足感を与えてくれました。それは、誰にも邪魔されない、自分だけの聖域が確かに生まれた瞬間でした。以来、来客時だけでなく、一人で集中して作業をしたい時などにも、私はこの鍵を使っています。扉一枚、鍵一つで、人の心はこんなにも落ち着き、守られるものなのかと、ささやかな平穏を噛みしめる毎日です。穴あけができないからと諦めている人がいたら、ぜひこの方法を教えてあげたいと、心から思います。