穴あけ不要で鍵を後付けする方法として、非常に手軽なのが両面テープで固定するタイプの補助錠です。ドアの室内側に本体を、ドア枠に受け金具を、それぞれ強力な両面テープで貼り付けるだけで設置が完了するという、その手軽さは大きな魅力です。しかし、この「簡単さ」の裏には、いくつか知っておくべき注意点や潜在的なリスクが存在します。購入を検討する前に、これらの点をしっかりと理解しておくことが、後々の後悔を防ぐために重要です。まず、最も懸念されるのが「接着強度」と「壁面の材質」の問題です。これらの製品には、通常、非常に強力な業務用の両面テープが付属していますが、その接着力は貼り付ける面の状態に大きく左右されます。表面がツルツルした化粧板や金属製のドアであれば問題なく接着できますが、壁紙や、凹凸のある木材、塗装された面などの場合、テープの接着力が十分に発揮されない可能性があります。無理に力を加えれば、鍵ごと剥がれ落ちてしまう危険性もあるのです。また、逆のリスクも存在します。それは「剥がす時のダメージ」です。強力な両面テープは、その名の通り、非常に強く貼り付きます。そのため、賃貸物件で退去時に剥がそうとした際、ドアや壁の表面の塗装、あるいは壁紙まで一緒に剥がしてしまう可能性があるのです。そうなれば、結局は原状回復のための修繕費用を請求されることになり、「穴あけ不要」を選んだ意味がなくなってしまいます。これを防ぐためには、剥がす際にドライヤーでテープを温めて粘着力を弱めたり、市販の「シール剥がし剤」を使ったりと、慎重な作業が求められます。手軽で安価な両面テープ式の鍵は、非常に魅力的な選択肢ですが、そのメリットとデメリットを天秤にかけ、自宅のドアの材質や、退去時のリスクを十分に考慮した上で、採用するかどうかを判断する必要があるのです。
本当に大丈夫?両面テープ式鍵の注意点