キーレスエントリーがもたらした利便性を、さらに別次元へと昇華させたのが「スマートキー」システムです。トヨタの「スマートエントリー&スタートシステム」や、日産の「インテリジェントキーシステム」など、メーカーによって呼び名は異なりますが、その基本的な概念は共通しています。それは、キーをポケットやカバンに入れたままで、車のドアの施錠・解錠からエンジンの始動まで、全てをハンズフリーで行えるという、究極の利便性の実現です。この魔法のような体験を可能にしているのが、キーと車両間で行われる「双方向通信」と「自動認証」の仕組みです。車両側からは、ドアノブ周辺などに設置されたアンテナを通じて、常に微弱なリクエスト信号(「近くにキーはありますか?」という呼びかけ)が発信されています。ドライバーがスマートキーを携帯して、この電波が届く有効範囲(おおむね半径1メートル前後)に入ると、キーがそのリクエスト信号を受信します。すると、キーは内部に記録された固有のIDコードを返信。車両はそのIDコードを照合し、正規のキーであると認証されると、ドアハンドルに内蔵されたセンサーに触れるだけで解錠できる状態になります。エンジン始動も同様で、車内にキーがあることが認証されていれば、ブレーキペダルを踏みながらスタートボタンを押すだけでエンジンがかかります。この一連のプロセスにおいて、ドライバーはキーの存在を意識する必要すらありません。キーレスエントリーが「鍵を取り出す手間」を省いたのに対し、スマートキーは「鍵を操作する手間」、さらには「鍵の存在を意識する手間」までも省いたのです。この圧倒的なストレスフリーな体験は、一度味わうと元には戻れないほどの魅力を持っています。スマートキーは、もはや単なる鍵ではなく、ドライバーと車をシームレスに繋ぐ、インテリジェントなインターフェースと呼ぶにふさわしい存在なのです。
究極のハンズフリーを実現する「スマートキー」